映画『ラ・チャナ』感想

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    JUGEMテーマ:フラメンコ

    映画『ラ・チャナ』チラシ1

    公式サイト:
    http://www.uplink.co.jp/lachana/

    伝説的バイラオーラ(女性フラメンコダンサー)のドキュメンタリーではなく、ラ・チャナという“女性”のドキュメンタリーだった。


    叔父に才能を見出だされ舞台に立ってから、テレビ、メディアへの露出を積極的に行い、人気絶頂にいたラ・チャナ。
    ハリウッドデビューの声もかかったにも関わらず、彼女は突然、舞台、メディアからも姿を消す……

    ラ・チャナが偉大である理由――踊りの技術もさることながら、それまで男の踊りであったサパテアード(フラメンコの足を鳴らす技術)を、女性でも行った先駆者だった。

    インタビューと当時の映像から、彼女の反省とその功績を追ってゆくスタイルだったが、華やかな軌跡の所々に黒い棘のような存在がいる……
    それはプロデューサーであり、ラ・チャナの夫だった男性だ。

    #metoo ――抑圧からの脱出

    ラ・チャナの口から語られる、ドメスティックバイオレンス(DV)があったこと。
    ハリウッドから声がかかった途端、彼女を舞台から引きずりおろし、“家庭”に縛ってしまう。(DV男の自分勝手なプライドの死守と嫉妬のためか) しかも、その夫は彼女と娘を捨て、金を持ち逃げしてしまう……

    当時のヒターノ(ロマ)社会の、保守的で男尊女卑な空気に抗えず、従うしかなかったと回想するラ・チャナ。
    その元夫の事を語る時の彼女は、どこか遠くを見つめていた……
    私はその表情に元夫への怒りよりも、諦念や失望、寂しさを見ていた。

    それらを払拭する、対抗して自分自身であろうとするために舞台に立っていた。
    ラ・チャナの芸術性は、DVや社会的なヒターノの抑圧に端を発していても、それを乗り越える彼女自身の力、慟哭だった。

    現在、ラ・チャナは再婚し、今はやさしい旦那様と生活している。
    映画の中で「書かないと覚えられないわ」と言うラ・チャナに「君はいつでも忘れるだろ」と言って、軽くどつかれる。夫婦漫才を見た(笑)
    その姿が微笑ましい。
    日常を追うカメラが写し出していたのは、 愛嬌があるワガママおばあちゃんだった。

    コンパスの重要性

    現在のフラメンコの女王といわれるカリメ・アマヤへのレッスンシーンは、フラメンコ好きには見逃せない。
    「あなたの踊りに憧れていたの」と語るカリメ・アマヤは、ラ・チャナからサパテアードの指南を受ける。
    マイクで音を拾っているようだが、鋭くかつ重い音に、舞台で観るフラメンコの圧や振動を想起する。

    ラ・チャナが強調するのは、コンパス(フラメンコのリズム)の重要性だった。
    ラ・チャナのメトロノームのように安定したコンパスはブレることが無い。

    これは私が習っているフラメンコ教室でも言われた。
    ……私は相変わらずリズム感無い。

    映画『ラ・チャナ』チラシ2

    舞台

    加齢による筋力の減少、糖尿病を患っていることもあってか、今は立って踊ることはできないようだ。
    それでも、彼女のコンパスの正確さは健在で、それに憧れる若手や、伝説的バイラオーラの姿を、踊りを見ようと観客が訪れる。

    椅子に座った状態で“踊る”……初めて見たスタイルだった。
    立ってサパテアードを打っていなくても、圧倒される。
    それはラ・チャナが正確なコンパスに基づく、パサデアートの確かな技術とパルマ(フラメンコで手を打つこと)が奏でる音の力強さだった。
    身体を楽器にしている。
    フラメンコは踊りだけではないことを実感した。

    舞台を終え、楽屋を片付けた後、彼女はゆっくりと階段を下りてゆく。
    そのエンディングは、昨年見た映画『パッション・フラメンコ』のエンターテイナーとして感動の余韻を与えるサラ・バラスの姿とは異なるものだった。
    普段表舞台しか見えない観客が垣間見た“普通”の姿――舞台という非日常ではない―――バイラオーラの一日の終わりだった。

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