映画『パッション・フラメンコ』感想

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    JUGEMテーマ:フラメンコ

    映画『パッション・フラメンコ』チラシ

    フラメンコ界の巨匠6人への敬意を示した舞台『ボセス フラメンコ組曲』の制作・公演に密着したドキュメンタリー。
    サラ・バラスの活動の軌跡、エンターテイナーとしての姿勢を垣間見るものだった。

    フラメンコ界の巨匠6人――パコ・デ・ルシア(※1 / 昨年、彼のドキュメンタリーを見た)、アントニオ・ガデス(※2)、カルメン・アマジャ(※3)、カマロン・デ・ラ・イスラ(※4)、エンリケ・モレンテ(※5)、モライート(※6)に捧げられた舞台。
    それは6人の巨匠を表しているのではなく、6人の巨匠が表現してきたものを受けてサラが得たものを表現して――“ボセス/声”として――届ける、というものだった。

    • パコ・デ・ルシア――努力
    • カルメン・アマジャ――反骨
    • エンリケ・モレンテ――決意
    • カマロン・デ・ラ・イスラ――自由
    • アントニオ・ガデス――向上
    • モライート――喜び

    巨匠たちのイメージと彼女の半生のイメージが共鳴するドキュメンタリー。
    インタビュー(声/ボセス)もまた、舞台の一部となっていた。

    カウロス・サウラ監督映画『フラメンコ・フラメンコ』で真っ赤な衣装を纏い高速ステップを披露していた彼女。
    現代バイラオーラの女王と形容される彼女が、先人の活躍した女性たち――カルメン・アマジャやフリーダ・ガーロら――に自身を重ね合わせ、女性ゆえの苦悩や故郷にいる幼い息子・ホセのことを想う母親の一面を垣間見せる。

    新人時代の彼女は、来日し伊勢丹会館のエル・フラメンコ(現ガルロチ)の舞台に立っていたとは知らなかった……!
    遠い異国の地(私にとってはこの国)で、バイラオーラとしてのキャリアを始めたということに驚いた。

    「高層マンションに住みたかったけれど」

    訪れたのは彼女が滞在していたらしい、都心の小綺麗な1DK(日当たりよくない?)。 ごめんなさい、日本の都市部住宅事情……

    サラはそこで原点回帰、再認識したようだった。舞台を作るということの。

    それは人に感動を与えるという事だったのだろう。

    私が通っているフラメンコ教室の先生もおっしゃっていた。
    「観客やカンテ、ギターさん、周りの人々から力を貰って、それを爆発させる」
    バイレ(踊り手)ひとりが観客や周りの人間に感動を与えるのではない。

    そしてその感動は力となる。

    レット症候群の啓蒙活動

    それは舞台での表現に止まらない。
    サラはレット症候群(※7)の啓蒙活動にも参加している。

    よく、有名人の慈善活動は売名行為のようにとられるが、己の知名度を活用するのではない。観客の感動に訴えているのだ。
    感動している人間は協力してくれることを、よく知っている。
    拍手が最高潮になったとき、彼女は支援を呼び掛けるTシャツを着る。
    効果的な瞬間を理解しているのは、エンターテイナーのプロ故だ。

    そして私も、レット症候群を認識する機会を得た。

    リアリティの非日常 / 幻想の日常

    興味深かったのは、コントラストが激しい舞台風景とフラットな陰影で写し出される日常の対比。
    パリ、メキシコ、ニューヨーク、東京、そして母国スペインの故郷・カディスの風景は、都市ごとの空気の違いを極力感じさせない。
    スペインにいても、その言葉でイメージされる強烈な日差しは見えない。青い空と黒い影も。
    曇りや雨、雪の日。何処か色褪せたように感じる、アンニュイな都市の情景。それが日常というものなのかもしれないが……

    まるでフェルメールの絵画のような、ちょっとピンぼけしている(※8)街の情景は注視しても掴みづらく、それ故に注視しえしまう。幽玄だった。

    それに対を成すのが舞台の照明。
    黒い影と映し出される彩度がはっきりとした、衣装の色。
    そこに明暗がはっきりするスペインの空気を垣間見る。

    最後を飾る、ステージ中央から拍手喝采の観客席を映すシーン。
    スポットの光と迫ってくる拍手の音に力を貰うような圧倒される光景だった。

    1. 1 Paco de Lucía(1947 – 2014)
      ギタリスト。フラメンコだけでなく、ジャズ分野でも活躍。
      https://ja.wikipedia.org/wiki/パコ・デ・ルシア (Wikipedia, 日本語) (2017/9/12 確認)
    2. ※2 Antonio Gades(1936 – 2004)
      バイラオール(フラメンコダンサー)。振付師、俳優としても多数の映画などに出演。
      https://en.wikipedia.org/wiki/Antonio_Gades (Wikipedia, English) (2017/9/12 確認)
    3. ※3 Carmen Amaya (1913 – 1963)
      バイラオーラ(フラメンコダンサー)。圧倒的な表現力で“伝説”“女王”と呼ばれる。女性で初めてパンツスタイルでフラメンコを踊った。
    4. 4 Camarón de la Isla(1950 – 1992)
      カンタオール(フラメンコ歌手)。
      https://en.wikipedia.org/wiki/Camarón_de_la_Isla (Wikipedia, English) (2017/9/12 確認)
      知ってなきゃ洒落になんないフラメンコ歌手 カマロン・デ・ラ・イスラ| ならんひーた
      http://blog.naranjita.com/?eid=1075244 (2017/9/12 確認)
    5. 5 Enrique Morente(1942 – 2010)
      カンタオール(フラメンコ歌手)。
      https://en.wikipedia.org/wiki/Enrique_Morente (Wikipedia, English) (2017/9/12 確認)
      知ってなきゃ洒落になんないフラメンコ歌手 エンリケ・モレンテ | ならんひーた
      http://blog.naranjita.com/?eid=1075258 (2017/9/12 確認)
    6. 6 Moraíto Chico II(1956 -2011)
      ギタリスト。
    7. 7 レット症候群
      https://ja.wikipedia.org/wiki/レット症候群 (Wikipedia, 日本語) (2017/9/12 確認)
    8. 8 フェルメールの絵画に見られるソフトフォーカスによるピントが合わない絵画を見て、鑑賞者の脳は焦点を合わせようとするが、絵そのものがピンボケしているので、その像は永遠に結ばれない。視神経と脳のズレがもどかしく、人はそれに注視してしまう。
      【過去日記】北川健二『フェルメール絵画の謎の本質を読み解く』
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