映画『BLAME!』感想 ――廃墟美学、人工知能とセキュリティ

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    JUGEMテーマ:SF映画 一般

    映画『BLAME!』チラシ

    公式サイト:
    http://www.blame.jp/

    20年の時を経て、(ようやくまとも?に)アニメ化!

    3DCG描画の技術向上と、『シドニアの騎士』ヒットのより実現……キラキラ

    !下記、ネタばれあり!

    あらすじ

    増殖した機械都市――人工物に閉鎖された世界――の中で、セーフガード“駆除系”に怯えて生きる人間。
    ハイテクがロストテクノロジーとなり、食料確保のため外に出るときに身に付ける装備以外、原始的な営みをしている「電基漁師」たちの“村”の人々。

    食糧確保のため遠征した「電基漁師」の若者達は、セーフガードに襲われる。
    窮地を救った、“ネット端末遺伝子”を探す旅人・霧亥と彼によって村の下層から発見された科学者・シボの進言により、“ネット端末遺伝子”の機械的な代用品を用いれば、“駆除系”を止める事も可能だという。
    窮地に陥っている村の安全と今後を考え、その試みに賭けてみたいと考えた“村”の頭領・おやっさんらと共に、シボの“ネット端末遺伝子”の代用品を製造できる「自動工場」へ向かう……

    廃墟都市情景と人間の生き方

    物語は完全に「電基漁師」たち人間側の視点で描かれる。

    「自動工場」へ向かう間の都市風景は軍艦島を愛でるような廃墟を楽しむ情景――人間の興亡に思いを馳せる、カタルシスがある。
    「文明が発達している・いた」描写は、シボの回想における塊都のみ。

    人が居なくなった巨大都市の廃墟で一夜を明かす電基漁師たち。

    夜営のため「火を見つめていると心が落ち着く」と語るおやっさん。
    “駆除系”が現れるときイオン臭がするという。
    視界を覆うハイテクなゴーグルに頼らず、生きるために五感を研ぎ澄ます。

    窒息してしまいそうな閉塞感の世界。空も大地も、有機的なものが無い世界にありながら、人間が非常に生物らしく生きているような描写だった。

    人間は本来、“ネット端末遺伝子”を持たなくても生きていける力が備わっている。現実世界の“あたりまえ”にはたと気付かされる瞬間でもあった。

    しかし、機械都市――基底現実――において“ネット端末遺伝子”を持たない人間はセーフガードによって「不法滞在者」と見なされ、排除対象だった。
    それが『BLAME!』の世界における戦いの理由だった。

    おやっさんをはじめとする「電基漁師」の人々、“ネット端末遺伝子”を持たない人間は、そのハイテクに触れなれない/触れない。 混沌とした世界の問題の本質を知る由もない。

    入場者特典第2弾 大ヒット御礼弐瓶勉メッセージ入りポストカード

    原作者に再構築されたハードSF

    原作の三つ巴で複雑な要素が削ぎ落とされ、シンプルになった物語設定。
    そのため、有機的な配管や増殖した肉塊、巨大蟲の姿は無かった。
    原作で重要な位置を占める珪素生物達、その他亜人、人種も……

    でもコミックにおける風景がフルカラーになって展開される点で満足。

    建築会社に勤めた経験をお持ちの原作者・弐瓶勉先生の、若干狂っているけれど執念で描かれた手書きパースの世界は、3DCG技術の向上で格段に表現しやすくなった。(セル画、手書きの頃は、動画でそれを再現すること自体にかなりの労力がかかっただろうし。)
    ……でも有機的な物体はまだ難しいのだろうか?動きとか、情報量が多くなってしまうとか、不自然さが残ってしまうとか…?

    単純に、尺の問題なのかも知れないけれど。

    第三者の下手な改編ではなく、原作者・弐瓶勉先生自らリビルド(再構築)した物語は綺麗にまとまっていたし、ファンには堪らないネタ――「シャキサク(※1)」や「でかい娘さんだなー」などちょっと可笑しさを誘う描写――も折り込まれ、原作を“壊していない”ことを意識させられた。
    それにしても「シャキサク」……あんな秘密(?)があったとは!私はてっきり、カロリーメイトみたいなものだと思っていたのに……!

    原作『BLAME!』1巻〜4巻に相当。(新装版では1〜3巻?)

    BLAME!(1) (アフタヌーンKC)BLAME!(2) (アフタヌーンKC)BLAME!(3) (アフタヌーンKC)BLAME!(4) (アフタヌーンKC)

    霧亥がセーフガードと表示されながらも違う理由は原作にチラッと語られるのだが……

    人工知能、ディープラーニング

    現実世界に目を向けると、ここ数年、人工知能の話題に事欠かない。
    その「今」に、『BLAME!』が映画化したことは、ちょっとタイムリーにも思えた。
    『BLAME!』は人工知能だけでなく、生体工学や極度に発達したユビキタス社会も出てくるけど……

    原作でも映画でも、統治局が管轄している都市管理システム・ネットスフィアにアクセス(進言とも言えるか?)できるのは“ネット端末遺伝子”を持つ人間だけ。
    セーフガードは本来、“ネット端末遺伝子”を持つ人間(正規ユーザー)を守るために、不法アクセスをする“ネット端末遺伝子”を持たない人間を排除する存在だった。 しかし“感染”による変異によって人類は“ネット端末遺伝子”を持たなくなってしまう。
    統治局から完全に独立しているセーフガード(セキュリティシステムの在り方から見たら、それは正に完璧なシステムと言える)は、人類を不正アクセスする存在――不法滞在者と見なしている。
    統治局はその事態を重く見ているが、セーフガードに干渉できない。
    だからこそ、ネットスフィアに正規アクセスできる“ネット端末遺伝子”の発見が必要不可欠である――
    霧亥の旅の目的だ。

    同時に、こうも考える。
    セーフガードという人工知能は“感染による変異”というイレギュラーな事態に対して、臨機応変に対処しきれなかった。すなわち、
    人工知能にプログラムされた命令を超えることは出来るのか――?

    映画『マトリックス レボリューションズ』の終盤、“ゼウス・エクス・マキナ”はオラクルとの会話では「私は機械だ。約束は守る」と言っていた。一度決めたことは反故にしない、機械故の融通の利かなさと取るべきか?
    それに似た判断か、裏目に出た『BLAME!』の世界では人類が滅びかけている。

    それを解決しそうな気がするのが、今注目されている人工知能の機械学習――ディープラーニング(※2)かも知れない。
    人間がプログラムを組むよりも、事態に素早く、被害を最小限に抑える対応が求められるのだから。

    そう考えたが、統治局はディープラーニングができているのか“感染による変異”という事態を理解しているが、セーフガードは愚直なまでに初期の命令を遂行している。セーフガードにはディープラーニングが組まれていないのだろうか?

    ソフトウェアは常に更新されていかなければならない。私たちの現実の世界で、ディープラーニングのその先にあるシンギュラリティ(技術的特異点)を人工知能が獲得するとき、セキュリティは臨機応変に対応できるプログラムが成されるのだろうか?

    しかし、セキュリティでもあるセーフガードが独自に排除対象を選ぶとなると、それは機能を果たしていないことになる。
    完全に独立し、命令を遂行する方が、やはり“セキュリティとして正しい”のだ……

    『BLAME!』、やはりよくできたSFだった。

    1. 1 【ネタバレ有】映画「BLAME!(ブラム)」の感想・あらすじ/原作未読でも楽しめるSFファン必見の作品!
      http://www.birumendesu.com/entry/BLAME%21-Movie
    2. 2 ディープラーニングは何が「ディープ」なのか:日本経済新聞
      http://www.nikkei.com/article/DGXMZO11923100Q7A120C1000000/
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