映画『美女と野獣』感想 ――地続きである自己肯定と愛の成就

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    JUGEMテーマ:映画

    映画『美女と野獣』チラシ

    公式サイト:
    http://www.disney.co.jp/movie/beautyandbeast.html

    現代の風潮に合わせた『美女と野獣』だった。

    “ありのままの自分“でいることを肯定することを強く推すようになった昨今のディズニー映画。

    原作の結末を改変し、ご都合主義的な愛の成就も多かったが、最近はそういった“子供だまし”的な描写が無くなったように思う。

    今回の『美女と野獣』は、自己肯定から自己実現することにより安定した精神がお互いを尊重する“愛”となることを、描写するようになったと、私は考えている。


    音楽――ミュージカル

    アニメもそうだったが、ミュージカル調の場面展開が印象的。同じエリア上にいるはずなのに人物の服装の色味が変わったり花籠が出現して、主要人物の心象、キャラクターを表現している。

    ミュージカル音楽はアメリカの十八番。ディズニーはそれをアニメ作品に積極的に取り入れていたと思う。
    90年代のディズニーアニメーションでは積極的に取り入れていたけれども(※1)、2000年代に入ってからあまり見られなくなったような気がしていた。(単純に私が見なくなっただけだったか?)
    『アナと雪の女王』の"Let it Go"を聴いたとき、心に沁みる音楽で、原点回帰したと思った。

    その原点回帰の象徴か、実写映画の技術がようやく追いついたのか、今回の実写映画化は非常に興味があった。
    かつてビデオで見た映像がほぼ実写化し、懐かしい曲が歌われる――

    リアリティとフィクション、そして時事

    18世紀フランスらしい、ロココ調のデザインが随所に見られる。
    ドレス、化粧、調度品……
    更にはアニメ版には描かれていなかった、パリの風景(屋根裏部屋の窓越し)まで。
    原作の『美女と野獣』が18世紀フランス文学であることを踏まえていると思われる。

    また、ベルが本を借りに行くのが教会だった。
    アニメ版では本屋に本を借りにいっていた訳だが……日本には貸本屋があったけれど、世界にもあったのだろうか?
    18世紀では公共の図書館など普及しておらず、当時、蔵書は貴族か聖職者しか持っていなかった。
    教会の少ない本を借りに行く描写は妥当だと思う。

    リアリティを“ちょっと”混ぜることで、子供だましを大人向けにしているような気がした。

    それ故に気になってしまったのが、人種の問題……
    勿論、アメリカが多人種・多民族の国家であること、映画業界が表現に人種、性差別をしてはならない方針を打ち出した理由は承知している。
    しかし……ステレオタイプなイメージを持っているためか、違和感として写ってしまった……
    社交界に有色人種が華やかな服を纏っていることに……

    それは前述のリアリティとの齟齬として、私が受け止めてしまったためだろう。

    ……!
    “映画”ではなく、アメリカの“ミュージカル”を観劇していると思えば良かったんだ!

    親子関係と自己肯定感

    パリの場面で、ベルが父子家庭である理由――恐らくペストにより母親が亡くなったこと、同じく野獣も病弱な母を亡くした事が描写される。
    同じ境遇でありながら、雲泥の差がある二人。
    自分の望みを自覚し邁進するベルと、自身の望みを知らず心の飢え・渇きを表面的な美の追求で補おうとした野獣(王子)。今回の映画はその対比を強調する。

    それは父親の存在が大きく寄与しているように思われる。

    惜しみない愛情を受けたベルと違い、 高い教養を受けながらも厳しくしつけ(という名目の抑圧と無関心のネグレクト)られた王子。
    野獣の姿(イメージ)に囚われていたのは、魔女の呪いである以前に、自身のイメージ(人間/等身大の姿)を認識できていなかったためではないだろうか?

    映画の冒頭では、王子はおそらく領地内の美しい人を選び抜き、妻を選ぼうと宴を開いていた。
    愛と所有欲が同義になっていたのではないだろうか?
    それはガストンも然り。

    野獣は愛を知ることで自己を回復し、 自己を回復することで愛を深めた。また「私は野獣ではない」と言う(自己を認識する)ことができた。
    そうした積み重ねを見届けて、魔女は呪いを解く。

    最近、私は自己肯定と自己実現、愛の成就は関連していると考えるようになった。

    聖書にも多くその言葉は表れ(※2)、「隣人愛」という言葉で表現されている。聖書の「隣人を愛せ」の行の前には「汝自らを愛するが如く」とある。

    自分を愛せなければ、他人を信頼し愛することはできず、また愛される事もできないのだ。

    それにしても……最近のディズニー映画は心理学的な内容描写を盛り込むようになったのは、気のせいだろうか……? 『塔の上のラプンツェル』は毒親問題、『シュガー・ラッシュ』の自己啓発セミナー、『アナと雪の女王』は自己肯定感の模索、『ベイマックス』のケア(カウンセラーのような役割)……

    もしかしたら、今回の『美女と野獣』では、魔女がカウンセラーのような役割を担っているといっていいのかも知れない。
    魔法で姿を変えたり季節を変えたり、人の記憶まで操れる彼女。そんな力を持ちながら当事者たちから距離を置きながらも、要所で人知れず力を貸している。
    問題の克服は“当事者”の自主性が必要なこと、それを促すのがカウンセラーの役割なら、魔女は野獣に愛を学ばせるためのカウンセラーだった。

    ありのままの、あるいは囚われない生き方――同性愛、男女同権

    LGBTという言葉が認知されるようになった昨今。それ故に導入された同性愛者の表現が、案の定物議を醸したようだ。

    ゲイであることを公言している俳優、ルーク・エヴァンスが起用されたのも、容姿だけではなくLGBTへの偏見の払拭(とそのアピール)、ダイバーシティへの取り組みの一環があるだろう。

    ルーク・エヴァンス、映画『ハイライズ』もそうだけど、最近ワイルドな悪役を演じる傾向が多く、板に付いてきた気がする……

    そういえば、ガストンのキャラクター性も変更されている。(※3)
    アニメ版で「無作法で自惚れ屋」と評された彼は、ハンターではなく村を守った帰還兵、英雄だった。
    その理想像は男性性の負の面(所有原理は支配欲、英雄願望は他者を救うのではなく傷つける方に特化)に変質し、強調する。
    そこから(男性)社会において抑圧される女性像――家庭に縛られ、女性に教育は不要、「年齢的にも子を産むこと」、そのための「結婚」という価値観を押し付ける――という、少し前の前世紀には“当たり前”だった価値観を思い出させ、今はそれを破戒することを想起させた。

    1. 1 【今週のクローズアップ】特別枠「ディズニー・アニメーション90年の歴史」【後編】 - シネマトゥデイ
      https://www.cinematoday.jp/page/A0004086
    2. 2 レビ記 19章18節
      あなたはあだを返してはならない。あなたの民の人々に恨みをいだいてはならない。あなた自身のようにあなたの隣人を愛さなければならない。わたしは主である。
    3. 3 「美女と野獣」を比較!実写版とアニメの違いは31個もある!ディズニー映画 - アートコンサルタント/ディズニーやミュージカル、ビジネス情報サイト
      http://artconsultant.yokohama/beautyandthebeast-animated-live/
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