映画『0円キッチン』感想

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    JUGEMテーマ:映画

    映画『0円キッチン』チラシ

    公式サイト:
    http://unitedpeople.jp/wastecooking/

    フードロスを無くす方法を模索するロードムービー。
    深刻な雰囲気のドキュメンタリーではない。

    世界中で生産される食糧のうち、1/3が食べられることなく廃棄される――
    なぜ、その数字が生まれるのか?その数字の根拠は?
    そして、それを減らすことができるか、その方法を模索する。

    ダーヴィッド監督は「ゴミ箱」を改造した「キッチン」を、食堂から出る廃油を燃料に走る車に積み、ヨーロッパ5ヵ国を巡り、その答えを探す。

    日本でのフードロスの原因として、「1/3ルール」(※1)が上げられている。
    この映画を通して、楽しみながらそれを解消する方法はあるのか、海外ではどのような試みがなされているのかを知りたくて、鑑賞した。

    観ていてワクワクする映画だった。


    提案されるフードロス対策は、日本の小学校で教わるような「遺さず食べる」等に代表されるような、日々のちょっとした心がけだけではない。
    あるいは、「もったいない」と人の罪悪感に訴えるようなものでもなかった。

    • 賞味期限切れ食材も食べられるものがある
    • 規格外で廃棄される食材の有効活用
    • 調理で使わない野菜くずを餌にして育てた豚を余すところなく調理する

    …生活の知恵や循環型農業システムの見直し、あるいはその延長のような提案。
    他にも、

    • 食べられる街路樹の果実や野草を生かすこと
    • 昆虫食の推奨

    …など。
    スーパーなど生鮮食品で売られている――もっと言ってしまえば、スーパーなどに頼らない――食材の提案など、眼から鱗なものもあった。

    賞味期限への疑問

    賞味期限切れの食材を出さないことが先決だが、(腐っていないかぎり)賞味期限が切れたものでも、食べれるのではないか?

    ドイツの一般家庭、あるアパートメントの各家庭を訪れ、賞味期限切れや量が多すぎて使い切れないもの、調理に使わない部位、廃棄するつもりでいた食材をあつめる。
    それらはその道のプロの手にかかると、素敵なコース料理になっていた。
    家庭の冷蔵庫で眠っていたもの、残り物によって出来上がった料理は、アパートメントの中庭での試食会になった。

    別の場所で、スーパーのゴミ箱にダイブして手に入れた賞味期限切れの瑞々しいリンゴは、完熟でとろとろのコンポートになっていた。

    食べられるもの

    市場に流通する食材のみに囚われないことも提案する。

    (その国では)外来種で、厄介者のため駆除された野草はそのまま廃棄するのではなく、きれいな色のジャムになっていた。
    畑では、売れない規格外野菜を用いて、大勢で調理して食べるイベント「チョッピング・パーティー」を行っていた。
    食育の現場として、昆虫食を体験する小学校の授業を取り上げていた。

    ここまでは、フードイベント的な様相がある。

    ダーヴィット監督は、もっと日常生活に組み込まれたフードロス解消方法を模索する。

    ベルギーでは、食品廃棄を禁止する制度制度がある。
    しかし映画内では、抜き打ちでスーパーのゴミ箱ダイブをすると、店舗によっては監視者がいないとそれが実行されていない事があわかった。

    フードロスを生む原因は何か? ‘先進国は「消費」に近い場面で食品ロスがおきやすい(※2)’。
    映画冒頭、ドイツの一般家庭を訪問し、賞味期限の切れた食材を回収する。
    「(賞味期限が切れているので)捨てるわ」
    各家族家庭で消費できる量の問題もありそうだが、 一定の野菜のみの受容、消費者がより消費しやすい大きさや、時代の流行などで、規格よりも大きすぎてしまうと、廃棄されるという。また、以前から指摘されていることだが、店頭に並んだ際、客の購買意欲を刺激するため見栄えの良い野菜を選ぶことも一因であることは言わずもがな。

    規格外の野菜も、調理すれば変わらないのに……

    日本のフードロス問題

    ベルギーの件ともからむのだが、日本で2016年に起きたダイコーによる廃棄カツ横流し事件には、食品廃棄だけでなく日本のリサイクル問題を浮き彫りにした。

    リサイクル事業がうまくいかない理由――
    コストがかかる、混ざっている(不純物がある)とリサイクルできない、処理能力が追い付かない、処理したものの受容が少ない……といった技術的な面。
    更には流通の監視体制が無いために不法投棄や未処理(処理施設を動かすとコストがかかるため)で放置されてしまうこと、リサイクル事業補助金のみ目当てで、不法投棄の温床となってしまう模様。

    石渡正佳『産廃Gメンが見た 食品廃棄の裏側』では、廃棄カツ横流し事件が起きた原因と共に、そうした問題を取り上げていた。

    産廃Gメンが見た 食品廃棄の裏側

    石渡氏は、これらを改善するためにも、また、リサイクルを円滑にするためにも、まずは速やかな法整備が必要であることを提唱する。

    自由経済、あるいは市場経済の原理であるアダム・スミスの「神の見えざる手」は万能ではなく、条件付きである。少なくとも環境経済には通用しない。環境経済には法律による枠組みが必須であり、規制と監視と罰則によらなければ、環境は経済にならない。古典派経済学が説くところの市場経済は需要と供給が釣り合うところで均衡する。これに対して環境経済はコストとペナルティが釣り合うところで均衡する。

    石渡正佳『産廃Gメンが見た 食品廃棄の裏側』p.176

    何か、私にできることは?

    この個人ブログで、いきなり法の問題を挙げても、ちょっとハードルが高い……
    映画を観て理解したのは、こうした身近な問題は、身近なところで、楽しみながら改善することができることはたくさんあること。
    賞味期限切れを食すだけでなく、残飯の処理についての提案もあった。

    ビュッフェスタイルレストランのフードロス問題。
    手をつけていないものに関しては、再び調理・加工して、新しい料理にする。
    これにはシェフの臨機応変さが求められるのだが……
    ならば、リサイクルを前提とした献立を考案するべきなのだろうか……?

    ただ……そうした料理をどうやって作るのか、分からなかった。
    家庭科でも教わらなかったり、料理本でそういった特集のものを見たことがなかったためでもある……

    そんな折に見かけた、以前、通販サイト・フェリシモで、“もったいない”を解消する生活実験のワークショップアイテムがある。その中に食材を使い切る、サルベージワーキングショップについてのものがあった。

    キッチン力アップで眠れる食材も使いきる サルベージクッキングワークショップ[12回予約ワークショップ]!販売終了!
    http://www.felissimo.co.jp/kraso/wk47322/gcd292370/

    もう販売していないのが惜しまれる……
    こういう料理研究家がいて、料理本がまとまっていてもおかしくないと思うのだが……

    ちょっと調べてみると、ネット上にサルベージクッキングのレシピをまとめているものがあった。

    サルベージの100ページ - 食材を救う知恵をあつめるプロジェクト
    http://salvageparty.com/page100/


    この映画の感想を、食品廃棄に関する視点から書いてみたが、それに留まらない映画だろう。
    冒頭のアパートメントでの試食会の風景は、普通にご近所さん同士での親睦会、パーティーの風景のようであったし。 食育然り、生活の知恵であり、ライフスタイルの提案でもあった。

    ただ、この映画で気になるのは、食肉のことに関して、ネガティブな感情のナレーションになってしまっている事だろうか……
    ダーヴィッド監督はベジタリアンになる事を考えているようだし、食肉用の家畜が快適な環境にいるとは限らない。そこから起因する罪悪感のようなものが醸しだされている。
    映画の中で、ダーヴィッド監督は食肉を否定している訳ではないが、気になった。私は野菜も好きだし、食肉を否定しないので。(※3)

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    1. 1 3分の1ルール(さいぶんのいちるーる)とは - コトバンク
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    2. 2 映画『0円キッチン』パンフレット p.7
    3. 3 【過去日記】闘牛批判考

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      • 2017.11.17 Friday
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