ダリ展

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    JUGEMテーマ:展覧会

    『ダリ展』国立新美術館 チラシ1

    公式サイト: http://salvador-dali.jp/

    乃木坂・国立新美術館( http://www.nact.jp/ )にて。
    〜2016/12/12まで。

    かつて画集で見たダリの作品の、本物をようやく拝見。
    『ダリ回顧展』に行けなかったため。

    どの作品も力があるので、個別の作品に対する感想を挙げる力が、今の私には無かった……(消化不良気味)
    観たかった、《引出しのあるミロのヴィーナス》(※1)の、引き出しを開けるエロティックさ……隠されたものを暴く衝動、もしかしたら引き出しの中にはヴィーナスのパンツが入っているかもしれない。とか。
    取り留めのないものになりそうなのだが……このブログは私の備忘録なので、ご容赦を。


    模倣 ――オマージュ、印象派、自然

    こうしてダリの作品を見ていると、時代毎に作風が変わることが見て取れる。
    ただしそれは、同時代の盟友ともいうべきピカソとは異なる印象がある。
    ピカソの実験的なイメージ、試行錯誤の量産に対し、ダリは外や過去から吸収した絵画を独自フィルタを通しアウトプットしている様相がより強かった。
    先人の画家たち、シュルレアリスムの画家たちとの交流から得たもの、同時代の他の派閥の画家の作品イメージを積極的に取り入れているため。 《魔女たちのサルダーナ》(※2)は思い切りマティス《ダンス》(※3)を思わせる、手をつないで輪になっている裸婦像だった。

    最初期の作品は印象派のよう。点描画のスタイルまであった。
    描かれているのは彼が愛したカダケスの眺望だという。
    夕方の情景だろうか?黄味を帯びたのピンクの絵具が使われているのでそう思った。
    色彩が豊かになる瞬間だからなのか、ノスタルジックな雰囲気が印象的で、ダリの眼には焼き付いて離れなかったのかもしれない。
    そしてカダケスの地形が、ダリの作品にみる独特な歪み、曲線のルーツだった。

    コラージュ ――再構築

    シュルレアリスム運動、そこで関わったコラージュ技法の影響からか、オマージュ作品……それは反復する同じもの――転じて同じ形の連続、連想ゲーム――という作品全体に一貫 する形への関心が生まれたのだろうか。

    キリコを思い出させる無人で緊張感のある遠景、ピカソとの交流と互いの影響……

    《子供、女への壮大な記念碑》(※4)の中に埋もれる《モナ・リザ》をはじめ、複数の絵画のオマージュからも、コラージュ的な要素を取り入れているように思った。

    そう前述したものの、コラージュは反復することを前提とした技法ではない。反復を可能にするだけだ。
    コラージュは切り抜いたマチエール(素材)を“再構築”をする表現技法だ。
    それに準ずる作品群は《三角帽子》(※5)だろうか。19世紀のボタニカルアート、昆虫図鑑を元に加筆して、新たな作品をつくっていた。

    以前、「ダリはトリミングの天才」と、コラージュ作家・北川先生から、フェルメールの作品に関する講義で教えていただいた。

    【過去日記】北川健二『フェルメール絵画の謎の本質を読み解く』

    その時、ダリがフェルメールを敬愛していた事も教えて頂いた。
    フェルメール《牛乳を注ぐ女》の足元にある不思議な箱――足温器(当時のヒーター)部分をトリミングしたら、ダリっぽい作品になるところからも、ダリのインスピレーションであった事をうかがえる。

    フェルメール

    《謎めいた要素のある風景》(※6)の中央にいる画家は、フェルメール《絵画芸術》(※7)に描かれている画家そのものだった。

    ‘父の書斎に《レースを編む女》(1669-70年頃、ルーブル美術館蔵)(※8)の複製画がかかっていたことから、この画家はかなり初期からダリにとって重要な拠り所であった(※9)'ようだ。

    その遠景に佇む、セーラー服の少年は、ダリ自身だという。タイトルからも暗示的で、短絡的に考えると、ダリの画家としての決意表明のように思えた。

    『ダリ展』国立新美術館 チラシ2

    メタモルフォーゼ ――変容

    ダリの画家としての決意表明――それはいったい、何であろうか?

    それは例えば、ダリの“カタチ”への関心、反復する形状――
    似た形が、一見関連しないものに繋がりがあったり、あるように意識させる。
    対象の抜き取られたフォルムが遠景の洞穴だったり、アーチ状の回廊の下で休む人物像で構成された顔だったり……
    だまし絵の様相がある。

    ‘私たちの視覚はふたつながらを同時に見ることは不可能なのである。(中略)人間の意識はそれほど完全に視覚に命令を伝達しえな いから、というよりも私たち人間はまず見る動物であるから、凸面が凹面に、さらに再び凸面へと変わり、ある種の眩惑の瞬間を味わうことになる'(※10)

    それらは“変身”のように思えた。 コラージュの“再構築”する技法は、錬金術を連想させる。それが転じて晩年の科学――原子論への関心に繋がるのだろう。

    多彩なメディア

    コピー、オマージュ、そして独自性……
    有名な作品だけでなく、小作品も展示されていた。ダリの多彩/多才な作品群。

    マリリン・モンローの顔をモティーフにした調度品然り、『ガラの晩餐』のコース料理の絵(この絵は楠本まき『耽美生活百科』でも取り上げられてた。復刻版後日発売予定らしい?)

    耽美生活百科 (YOUNG YOUコミックス)

    日常に ちょっと手を加えると不可思議になる。

    宝飾品のデザイン

    『トリスタンとイゾルデ』『オフィーリア』など、文学をモティーフにしたものが印象的だった。
    主題のためか、アールヌーヴォー的にも見えた。

    《トリスタンとイゾルデ》は、向かい合った二人がルビンの杯――心理学のだまし絵のモティーフになっており、それが物語を暗示する。
    杯を注視すれば、それは二人の破滅への運命の愛をもたらしてしまう魔法の媚薬をいれたもので、誤ってそれを飲んでしまった二人が見つめあっている――

    ミレイのイメージが強くなってしまったオフィーリアの、水に浮かぶ顔を正面から(見下ろすように)描写しながら、その顔の中央には宝石が填まっている。
    「オフィーリア」の名がなければ分からない、しかし水面に広がる髪が暗示する――

    映画

    ルイス・ブニュエルとサルバドール・ダリによる映画『アンダルシアの犬』が会場と休憩室で上映されていた。
    手に穴が開いて、そこから蟻が湧き出したり、眼球が切り裂かれたり……
    男と女の関係性の物語だが、明確なストーリーはなく、不条理劇、悪夢的、狂気的なものの元祖だろう。

    何よりこれは動くシュールレアリスム……
    この映画を観ていると、ダリの絵画はみな“動的”だったことに気付かされる。

    "Un Chien Andalou Trailer Original" (1929)

    無声であることで、かえって想像力を掻き立てられる。


    別の場所では、アメリカとダリの関係の表れとして、ディズニーとのコラボアニメーションが会場で上映されていた。

    "Destino" (1946)

    ダリのデッサンをもとにそのシュルレアリスムの世界をアニメーションで表現するという作品であった。
    軽やかな動きと女性の顔がディズニーで、世界観がダリ。
    古き良き時代の音楽とともに、こちらも男女の関係性の物語が展開する。こちらの方は明るく、夢想的。
    私はスペインの光と影が織りなす、コントラストも意識させられた。

    映画作品を作るのだから、ダリがアニメ表現にも関心を持つのは想像にかたくない。
    しかしこの映画は資金不足で頓挫する。だが2003年完成した。
    CGも駆使した、重く流動する構造物は、セル画では難しかったと思う。

    映画と言えば、映画『ホドロフスキーのDUNE』では、皇帝役のオファーがあった。 この映画は実現することが無かったが、資料映像では演説するダリの姿と、(本妻であるガラ夫人公認の)愛人・アマンダ・リアが当時の様子を答えている。

    ダリが愛する人というと、どうしても外せないガラの存在。
    彼のミューズで数々の作品に現れ、今展覧会に多数コレクションを提供した美術館の名前にもなっている。
    かかあ天下だったのだろうか……?
    ゴシップな愛憎劇も含めて、自身の作品だったのかもしれない。
    『美術手帖 2016年10月号』では、ダリとガラの関係は、ドラマティックなコミックになっていた。

    美術手帖 2016年10月号

    参考資料として、リアルタイムで活躍していた頃に出版された書籍、自伝なども展示。
    彼がいかにメディア(あらゆる媒体、表現であれ、報道であれ)を意識し、多才であり天才を演じていたかが垣間見れる。

    ダリよ、貴方の計らいは間違っていなかった―― 私達はダリの死後もメディアを通して、面白い貴方を見ることができる

    個人的に気になっていた、ダリによる闘牛に纏わる作品も複数。(個人的に闘牛に関して気になっていたため)
    《「幻覚を与える闘牛士」のための習作》では、闘牛士の姿がはっきりと描かれている。
    2体の《ミロのヴィーナス》によって作られた闘牛士の肖像。
    ピカソも闘牛士に纏わる作品を多数描いていたが、ミノタウロス神話をモティーフにしたそれとは異なる。

    私が闘牛への関心を強くするきっかけとなったコミック、えすとえむ『Golondrina-ゴロンドリーナ-』3巻でも、彼の名前にちなんだキャラクターが出てきた。
    ベテラン銛突きで、顔や設定に、ダリを彷彿させる。
    ダリの後世への影響は、極東の島国のサブカルチャーにも及んでいた(笑)

    Golondrina-ゴロンドリーナ 3 (IKKI COMIX)

    【過去日記】『Golondrina-ゴロンドリーナ-』考察 ――闘牛とフラメンコ考

    《ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌》(※11)

    原爆に関する作品があったとは知らなんだ……
    ピカソ《ゲルニカ》と同様に、現場の生々しさではなく、報道などから知ったのであろう。抽象的な恐怖――むしろ憂いのようなものを感じた。
    エノラ・ゲイと思われる機体が描かれた頭部と、それに寄り添うような鳥が飛んでいる青空――これも顔の形を成している。
    形の反復が、一連の時間の経過や事象の二面性を表しているように思えた。

    死の恐怖、死者への哀悼よりも、戦争への絶望と憂いではなかろうか?
    当時、ダリは原子論に関心があったようだし、あらゆる原初の存在、夢のエネルギーである原子が、戦争で使われれば大勢の人を抹殺できること――この絵画の遒重いタールのような曲線の中に、それらに対する批判を感じた。

    『ダリ展』グッズ

    会場のグッズコーナーでは、ダリの作品をモティーフにしたピンバッジのガチャポンがあった。1回1ダリ(架空通貨。1ダリ=300円)。
    ガチャポンというよりは、「誰得ギミック?」な巨大な回転抽選器で、回すと白い卵形カプセルが坂を転がってくる……
    途中で止まっちゃったけど。

    出てきたものは《ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌》の、憂いを帯びた青い空の顔だった。

    帰りに書店に立ち寄る。
    『ダリの塗り絵』販売記念で、対象書店で『ダリ展』の半券を提示すると、ポストカードが貰えた。

    ダリの塗り絵

    ぴあ「ダリの塗り絵」発売記念!ダリの「オリジナルポストカード」がもらえるキャンペーン実施中!
    http://www1.e-hon.ne.jp/content/cam/2016/dali.html (2016/10/6確認)

    参考文献
    ダリ (岩波世界の美術)
    ダリ (岩波世界の美術)
    僕はダリ (芸術家たちの素顔)
    僕はダリ (芸術家たちの素顔)
    1. 1 Salvador Dali"Venus de Milo with Drawers (and PomPoms)" 1936 The Dali Museum
      http://archive.thedali.org/mwebcgi/mweb.exe?request=record;id=380;type=101
    2. 2 Salvador Dali"La Sardana de las Brujas" 1920 The Dali Museum
      hhttp://archive.thedali.org/mwebcgi/mweb.exe?request=record;id=173;type=101
    3. 3 Henri Matisse"Dance (I)" 1909 The Museum of Modern Art
      http://www.moma.org/collection/works/79124
    4. 4 Salvador Dali"La mémoire de la femme-enfant" 1929 Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía
      http://www.museoreinasofia.es/en/collection/artwork/memoire-femme-enfant-memory-child-woman
    5. 5 Salvador Dali"Illustration for Tres Picos" 1955 The Dali Museum
      http://archive.thedali.org/mwebcgi/mweb.exe?request=record;id=1778;type=101
    6. "Enigmatic Elements in a Landscape" 1934 Dalí Theatre-Museum
      http://www.salvador-dali.org/museus/teatre-museu-dali/the-collection/145/enigmatic-elements-in-a-landscape
    7. 7 Johannes Vermeer van Delft"Die Malkunst" 1666-1668 Kunsthistorisches Museum
      http://www.khm.at/objektdb/detail/2574/
    8. 8 ヨハネス・フェルメール《レースを編む女》1669‐1670 ルーヴル美術館
      http://www.louvre.fr/jp/oeuvre-notices/《レースを編む女》
    9. 9 図録『ダリ展』(2016国立新美術館) p.100
    10. 10 坂崎乙郎『幻想芸術の世界』講談社 1981 p.184
      幻想芸術の世界―シュールレアリスムを中心に (講談社現代新書 189)
    11. 11"Uranium and Atomica Melancholica Idyll"
      http://www.museoreinasofia.es/en/collection/artwork/atomica-melancolica-melancholic-atomic
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      • 2017.09.21 Thursday
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      サルバドール・ダリSalvador Dalí シュールリアリズムを代表する画家・ダリの回顧展が六本木の国立新美術館で開催されています。今回のダリ展は、フィゲラスのガラ=サルバドール・ダリ財団、フロリダ州セント・ピーターズバーグにあるダリ劇場美術館、マドリードの
      • dezire_photo & art
      • 2016/11/26 1:03 PM

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