黄金伝説展 古代地中海世界の秘宝

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    JUGEMテーマ:展覧会
    黄金伝説展

    公式サイト:
    http://www.tokyo-np.co.jp/gold/
    〜2016/1/11まで。

    地中海と黒海における金の流通、地域ごとに変わる金の細工方法などから、金に対する価値観の変容もわかる展覧会だった。
    実物の金細工だけでなく、黄金に纏わる主題の絵画も展示されていた。

    金の流通と価値感の変容はギリシャ・ローマ神話にも見て取れる。
    ギリシア神話を絵画や彫刻の主題として紐解いていく事が多い展覧会で、黄金という素材を解釈するというのは斬新な試みだと思った。

    その筆頭は“金羊の毛皮”に纏わる物語だろう。

    牡羊座のエピソードでもある黄金の羊。
    殺されそうになったプリクソスにゼウスが遣わして彼を救出し、プリクソスは逃亡先であるコルキス(現在のグルジア)でこの羊を生贄にして神に返した後、毛皮をその土地の王に献上する。
    そして、この金羊の毛皮を求めてアルゴー探検隊が訪れる――(※1)

    会場に入って直ぐ、この物語を主題とした作品が展示されている。

    エラスムス・クエリヌス《金の羊毛を手にするイアソン》

    エラスムス・クエリヌス《金の羊毛を手にするイアソン》
    逞しい身体つきのイアソンが金の羊毛を手にして、神殿を後にしようとしているのだろうか?
    イアーソーンの向こう側に見える火は、プリクソスが金羊をゼウスに返上した際に使った供犠台を暗示しているのだろう。一連の神話を一枚の構図に収めているようだ。
    身体をひねったポージングが印象的な絵画だ。

    ギュスターヴ・モロー《イアソン》

    ギュスターヴ・モロー《イアソン》
    この作品については……多くの人が言及しているので、最早何も言えない。
    輝くような肢体に息をのむ。
    エラスムス・クエリヌス《金の羊毛を手にするイアソン》とは異なる、中性的で若々しく健康的な身体だ。
    神話の図像解釈から解き放たれ、独自の世界観となっている。
    火を吹くドラゴンはグリフォンに、樹の枝に掛けられた金羊皮は柱と一体化して装飾のようになっている。

    この物語が黄金の流れの寓意であるだけではないそうだ。黒海には黄金装飾の文化があった事を知る。
    会場では、世界最古の金が発見されたというブルガリアの黒海沿岸の町・ヴァルナの銅石器時代墓地の再現と、埋葬されていた副葬品が展示されていた。
    それらに彫金などは施されておらず、シンプルな延べ棒や平たい円盤型のコインだった。


    貴重な金属であり、他に類を見ない光沢性や腐食しない不変性は、不死・神のイメージとも結びつく。
    宝飾品の主題として、お守りとしてエロス(アモル)やニケなど神々の姿をかたどった耳飾り、ディオニュソスの象徴であるテュルソスなどが見受けられた。

    ギリシア神話の中で、神の化身としての黄金を題材にしたもので真っ先に思い出されたのは、王女ダナエの物語。
    ゼウスに見初められ、彼が黄金の雨となって彼女に降り注ぎ、懐妊し英雄ペルセウスを産む。

    エドワード・バーン=ジョーンズ《黄金の雨》(『フラワー・ブック』より)

    エドワード・バーン=ジョーンズ《黄金の雨》(『フラワー・ブック』より)
    センセーショナルだったグスタフ・クリムト《ダナエ》とは異なり、婚礼の祝福のような、降り注ぐ黄金の雨粒にヴェールを被ったように見える。
    金を強調するための黒いヴェールのせいか修道女のような姿に、ギリシア神話的というよりもキリスト教的な雰囲気を漂わせているようにも思えた。

    グスタフ・クリムト《第1回 ウィーン分離派展》ポスター

    グスタフ・クリムト《第1回 ウィーン分離派展》ポスター

    金細工師の家系に生まれたグスタフ・クリムト。それ故に、金の扱いが本当に上手だと思う。
    彼の名画に見る「黄金様式」と呼ばれる、写実的な人物描写と金と幾何学的な模様を融合させた作風。東方ビザンティン様式のモザイクや東洋の美術表現の影響が垣間見れる。それらは上品さを湛えている。

    「ミノタウロス退治」は好きな主題のひとつなので、どうしても気になってしまう。
    ウィーン分離派の記念すべき第一回展覧会のポスターはクリムトが手がけた。
    ミノタウロス(アカデミズム・保守性に支配されたウィーン美術界)を刺し殺す英雄テセウス(分離派)の姿。 因みに、載せたポスター図版は「検閲後」のもの。
    裸体表現で股間が見えていた事が問題視され、前景に木が描かれている。(この木には浮世絵表現を見る事もできる)
    「検閲前」のポスター展示は11月25日まで。

    丁度、映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』の公開も間近なので、クリムトの作品が拝見出来てタイムリーだと思った。
    映画公式サイト:http://golden.gaga.ne.jp/

    他にも、ミダス王の物語(※2)を主題としたものも。
    ニコラ・プッサン《パクトロス川の源のミダス王》はミダス王が酒神ディオニュソスの養父をもてなしたお礼に、手に触れたものが黄金になる力を授かる。しかし、食べ物を食べようとしても全て黄金になってしまい、(別の話の筋では、娘に触れて彼女を黄金の彫像にしてしまったため)後悔した。デイオニュソスはパクトロス川で行水するよう助言をし、ミダス王が川の水で洗うとその能力は川に移り、川底の砂は金になったという。
    砂金の起源説話だ。
    一枚の画の中に対となる存在を描き分けている。富める者と貧しい者、黄金に対して魅力を失い手放す者と貪欲なまでに求める者、寝そべる者と屈んでいる者、老人と若者……
    富に対する教訓譚としてもさることながら、言っていることが二転三転する人間の信用できなさをも寓意しているように思える。


    神話からも、貢物として黄金は各国を巡り、そしてある時はそれを目当てとする予期せぬ来訪者、時に争いを招いてしまう……
    そんなものが見え隠れする。

    何故それほどまでに、人間は黄金に憧れるのか?
    そして時に、執着するのか――

    J・R・R・トールキン『ホビット』『指輪物語』とそれを原作とする映画において、黄金が権力と執着の象徴のようなものであったことは以前指摘した。(※3)
    加工しやすく、耐腐食性が高く、希少な鉱物ゆえ価値が見出され、そこから権力の象徴となり、執着という邪な心理が発生してしまう。
    執着を生むのはそれだけではなく、黄金が輝くものであることも理由の一つだろう。
    光るものは人や動物の関心を惹く。
    よく恋愛テクニックなどで“男性はとくに揺れるもの、光るものに弱い(惹かれる)”とも聞く。
    科学的な根拠についてはここでは割愛するが……

    科学的な視点とは違い、それを体感した展覧会だった。

    参考文献

    1. 金羊毛(Wikipedia) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E7%BE%8A%E6%AF%9B (2015年11月14日確認)
    2. ミダース(Wikipedia) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%B9 (2015年11月14日確認)
    3.  過去日記:映画『ホビット 決戦のゆくえ』感想

    金のインサイド・ストーリーhttp://www.goldxau.com/> (2015年11月14日確認)


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      • 2019.10.14 Monday
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      • 14:51
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